「子どもとことばの面白さ・
その特質と今日におけることばの変容について」
子どもとことば研究会代表、元立教女学院短期大学教授
今井 和子
概要
社会環境の変化が子どもたちの生活に異変をもたらし、@日常会話が激減しています。家庭における日常対話こそが、生活に根ざした意味を子どもたちに形成させていくのです。A幼児期は耳の時代=大量のことばが情報機器から騒音と化して耳に入ってきます。これによって言葉を聞き流す、ことばからイマジネーションを育む力が弱くなっています。そしてBことばの断片化と記号化が進み言語力や感情の分化、発達が劣化しています。現代の子どもたちの口ぐせのことばは「かんけいない」「べつに…」「何でもない」「どうせ」「うるせえな〜」「だまれ」「ムカつく」「やばい」「知るもんか」といった排他的なものが多く、閉鎖的なコミュニケーションに傾向しています。自分の感情表現ができないために心の中にもやもやが鬱積していきます。長いこと心に鬱積した感情は、自分自身を守るため『守らねば…』と攻撃性を表わしたり、あるいは潜水艦のように深いところに沈み硬化していきます。
子どもたちは、大人から<怒られそう、とがめられる、否定される>などの否定的な評価をされることに過敏になっています。その対応としては、a今自分はどう思っているか? 自分の感情を認知すること。自分の感情を認知するようになることは、他者の感情についても考えられるようになることを意味します。b『困っているんだね』『怒っているのね』と共感してもらい感情を静め、人には理解してもらえる…と相手に心を開くようにしていくことが最も大切なことではないでしょうか。子どもが何か話そうとする前に、一方的に大人の思いを押し付けてしまうことが多すぎるのではないでしょうか。まずは子どもの言い分を聴く⇒折り合いをつけることを習慣化したいですね。
さて「子どもとことば研究会」は31回大会を迎えました。これまで子どものことばや、そのことばの背後に秘められた気持ちを聞きとること、子どものことばがいかに面白く力のあるものであるか、感動し驚嘆してきました。それをこの度「0歳児から6歳児 子どものことば 心の育ちを見つめて」(小学館)にまとめました。真実を手づかみにする力のある言葉の数々から子ども性を探ることがテーマです。ぜひ読んでみてください。
参加者の感想から
●子どものことばの面白さ、自分も集めたくなりました。
●やっぱり子どもって面白い、無限の可能性を持っているなぁと思い、改めて、そのかかわり、ことばを大切にしていきたいと思います。
●子どもだけが変わったのではない、子どもと大人の関係が変わった…はじめに今井先生がおっしゃったことが話を聞く中で理解できた。メディアと子どもの繋がり、影響について再確認でき、日頃どのように子どもたちと関わり、声かけをすべきか見直すことができた。