第30回 全国子どもとことば研究集会
【講演】
20日(土)9:30〜15:15

「子どもとことば研究会 30周年を迎えて」
〜子どものことばから 改めて子どもの存在の意味を探り
これからの「子どもと大人の関係」を考える〜

子どもとことば研究会代表
今井 和子(いまい かずこ)


概要

 30年前、全国子どもとことば研究集会第1回大会がこの会場で開催されました。それから1回も休むことなくこの会が続けてこられたのは、「子どもに惹かれ、子どもを思う気持ちで繋がり合ってきた会員の皆さんの熱意と支えがあってこそ」と感謝の気持ちでいっぱいです。この30年間、否それよりずっと以前の子どもを取り巻く環境、遊びや生活体験、感情や想像力・ことばなどがどのように変化してきたのかをこれまでの活動を通して振り返ってみました。

 まず日本で最初に子どものことばに注目し、採集を呼び掛けたと言われるのは北原白秋でした。白秋における子どもの発見は児童詩教育の領域で大きな足跡を残しました。
 その後、子どものことばを「口頭詩」と呼び「長野県幼年教育の会」が口頭詩集「ひなどり」を発刊しました。「子どもの生活から吹き出してくる人間らしい感動、優れた詩がもつ人間の心への鋭い問いかけ」が表現されていました。その本の刊末に江口季好氏は、幼児を正しくとらえるには生活綴り方で言う「生活者であり学習者である」という見方をしなければならないと述べていました。
 その後、「子どものつぶやき」としてことばを採集してきた人もいました。が、私たちの研究会では「子どものことば」として共通理解してきました。その理由は、0、1歳児の頃の音声にならない「言葉以前のことば」を聴き取り通じ合うことの重要さ、さらに子どもの行為はことばに代わる言葉、ことばにならないことばをもふくめて「広義の言葉」として聞くことを大切にしてきました。

 さて、この30周年を迎え、研究会では「子どもたちのことばが社会環境の変化でいかに変わってきたか」を追究していくこと、もう一方で「環境が変わっても、昔も今も変わらない子どものことばの面白さとは何だろうか?」 その両方の視点から、子どものことばを探究していきたいと考えています。来年の大会ではその研究の結果をきっと1冊の本にまとめられるのではないかと進めています。ご期待ください。


参加者の感想から

「子どものことばには必ず意味がある」。日頃の忙しさから、つい聞き流してしましがちだが、一つ一つ丁寧に聞き、対話しようと思った。

子どものことばをたくさん集めると自分の保育が見えてくるというお話が心に響き、もっと大事にしようと思いました。

今井先生のこの会への思いがとてもよくわかりました。改めて、子どものつぶやきや思いを汲み取る保育を心がけたいと思いました。