第30回 全国子どもとことば研究集会
【分科会2】
21日(日)9:30〜14:00

「絵本・おはなし」

助言者/近藤薫美子(絵本作家)

世話人/市川美代子(児童図書館研究会・科学読物研究会会員)
斎藤和子(保育者) 
           


概要

 参加者14名に、日頃、子どもたちがどんな絵本を楽しんでいるのか、どんなことを聞いてみたいと思って分科会に参加したのかを交えながら、自己紹介をしてもらった。
 近藤薫美子氏には、これまでの人生を振り返って、どんな子ども時代を過ごしてこられたのか、子ども時代のできごとで忘れられないこと、子育てを通して子どもと経験したこと、数々の絵本がどのようにして生まれ、作られてきたのか、その絵本を通して伝えたいと思っていることなど、語っていただいた。ユーモアの中にも、体験を通しての言葉には、近藤薫美子氏の生き方、感じ方、人生観がしみじみと伝わって、参加者ひとりひとりの心に響く言葉となって残った。

―近藤薫美子氏のお話からー

・何故、虫を描くのか? 一番人間とかけ離れた形のもの、多種多様なものが、同じように生きている。この地 球という惑星は、虫の惑星だということを認識してほしい。
・体験して、「ほんとうに、不思議だな、何故だろう」と考えて、突き詰めていくと、ひ とつは、科学の力になる。もしこうなったらと考えていくと、お話をつくったり、芸術 の世界をつくってしまう。
・何故、ゴキブリはこんなに嫌われるのか? 「汚いものを食べているから」ということは、きれいにしてくれている。 この世の中に何一つ、死体が無いということは、ゴキブリやシデムシなどが、きれいに してくれている。水洗トイレのように水で流してしまい、自分の前からいなくなるとい うことは、ほんとうにきれいになったということではないことを、子どもたちには知っ てほしい。
・絵本というのは、大人よりも子どもの方が、はるかに自分の身近な物としてとらえて いる。子どもに見せると、食い入るように絵を見ている。大人は、「こういう本ですよ」 と、言葉で言わない限り、わかってくれない。4歳児が、「イタチの子」の本という。 「いのちってまわっている」ということがわかる。(絵本『のにっき』について)
・命(いのち)というのは、生物体としては、ひとつの命かもしれない。命はひとつだ から大事にしてねと言われるけれども、私は、ひとつとは思っていない。あなたの命は、 あなただけのものではない。あなたと実際に関わっている人との命だから。命はひとつ でないから、大事にしてほしい。そう考えると、私のことを覚えていてくれる人がいる 限り、その人の心に生き続けることができる。命は関わりによってつなげていくことが できる。


参加者の感想から

絵本作家の近藤さんの深い想いを知り、全部の作品を見てみたいと思いました。先生の 幼少の頃の大人の不用意な言葉で傷ついたお話は、とても辛い想いで聞きました。とて も貴重な分科会の時間で、大満足でした。

虫への抵抗がなくなり、先生の世界にすぐに惹きこまれ、魅力を感じました。 自分が楽しいと思える絵本を、子どもにすすめたい。