第29回 全国子どもとことば研究集会
【記念講演】
23日(日)13:00〜14:45

「電子メディアと子どもの発達」
〜子どもの心と体を育てるために大切なこと〜

旭川赤十字病院小児科 第一小児科部長
諏訪 清隆(すわ きよたか)


概要

 子どもたちはテレビ、ビデオ、ゲーム機、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末といった数多くの電子映像メディアに囲まれて育っている。これらが子どもの心と体の成長・発達に与える危機的な状況とその理由について、旭川赤十字病院の諏訪清隆さんにお話しいただいた。
 乳児期の脳では、外界から繰り返し与えられた五感への刺激のとおりに「子どもの世界」ができる。乳児にとっての電子メディアの刺激は、自然界にない人工的な刺激なので直接物を見る場合と脳の受けとめ方が全く異なり、脳や体の仕組みに合わない。電子メディアの刺激は、自然界の刺激に比べると、きわめて単純で、複雑さに欠ける。まだ脳がしっかりとできていない乳児が、強くて単純な光や音の刺激を常に受けていると微弱な刺激を感じとれなくなる恐れがある。長時間、電子メディアに触れることで、親子の会話が少なくなり「言葉の発達」に遅れが出たり、親子の愛着形成にも支障をきたす。
 幼児期ではメディアの使用によって睡眠不足になったり、体を使って遊ばないことで体力や運動機能の低下につながる。またコミュニケーション能力が育たず将来に関わる問題にも発展する。電子メディアとの接触時間が長いほど、「自己肯定感」が低く、「対人関係に消極的」で、「すぐにムカつく」子どもが多くなる傾向があることがわかってきた。
 子どもの一生に関わる「人間の基礎」がつくられる乳幼児期では、保護者によるメディアコントロールが重要だ。電子メディアに接するよりも家族で過ごす楽しい時間を大切にして、自らの体を使って様々なものを見たり、聴いたり、嗅いだり、触ったりしながら、五感を使った遊びの楽しさや人と触れ合う楽しさをたくさん体験させて育んであげてほしい。


参加者の感想から

たくさんの調査結果を示していただき、とてもわかりやすかったです。同時に、メディア漬け の子どもたちに驚き、深刻さが増してきていると感じました。当園でも、親がスマホをいじっていて子どもの危険に気づかないという光景をよく見ます。今後、諏訪先生のお話を基に(「小児科の先生」のおっしゃることはインパクトがあります)保護者に対して、メディアの子どもへの影響を伝えていきたいと思います。

ゲーム、テレビはいけないと言われてはいるけれど、どうしていけないのか理由が明確になり、 改めてメディアの子どもへの影響の怖さを知りました。スマホ育児も気になりつつも、保護者にどう伝えたら良いか悩んでいたのですっきりしました。